Ⅴ.経営学の3つの「ソーシャル」

Ⅴ.経営学の3つの「ソーシャル」

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Ⅴ.経営学の3つの「ソーシャル」

世界の経営学の一大潮流、ネットワーク理論

  • ・ソーシャルな関係が機能する条件
    ①ソーシャルを活用する目的:深く情報を得たい=強い結びつき
    ②得たい知識や情報の質:暗黙知を得たい=強い結びつき
    ③事業環境:不確実性の高い環境=弱い結びつき
  • ・3つの「ソーシャル」
    ソーシャル・キャピタル(社会関係資本)
    関係性のソーシャル・ネットワーク:人と人とは、そんなに単純ではない。
    構造的なソーシャル・ネットワーク:ネットワーク全体の構造に注目。
1.ソーシャル・キャピタル(社会関係資本)

(1)人と人が関係性を持つことそのものが資本になりうる。

(2)「自分が相手に良いことをすれば、いつかそれが何らかの形で自分に返ってくる」という期待感が出てくるために、相手を合理的に信頼できるようになる。

(3)ジェームズ・コールマン(1988年)
2つの条件を満たした「ソーシャル・キャピタル」は、人や組織にメリットをもたらす。

  • 条件①、人と人との関係性からもたされること。
  • 条件②、その関係性が人の行動に影響を与えること。

(4)フリッツ・ビル教授とキャリー・リアーナ教授(2009年)
子供の成績を上げるには、教師個人が優秀なだけではなく、その人が周囲との「ソーシャル・キャピタル」を築いていることも重要である。

2.関係性のソーシャル・ネットワーク

(1)人と人とは、そんなに単純ではない。

(2)「弱い結びつきの強さ(Strength of weak ties)
マーク・グラノベッター教授(1973年)
「弱い結びつき」のネットワークの方が、「強い結びつき」のネットワークよりも情報伝達が効率的である。

(3)クリエイティビティに注目
ジル・ペリースミス(2006年)
「弱い結びつき」のネットワークの方が、より情幅広く多様な知識を効率的に手に入れやすい。

(4)文書化が難しい知識に注目
モーテン・ハンセン教授(1999年)
暗黙知を得たいのに「弱いつながり」に頼っているプロジェクト主任は、プロジェクトを成功させることが難しい。
「知の探索」には、「弱いむすびつき」が有効である。

(5)アライアンスを通じた企業と企業のソーシャル関係に注目
ティム・ロウリー教授とディーン・ベーレンズ教授及びデヴィッド・クラッカード教授(2000年)

  • ①分類:強い結びつき(合弁事業、資本提携、共同研究など)、弱い結びつき(共同マーケティング、ライセンシング契約など)
  • ②不確実性の高いビジネス:「弱い結びつき」のアライアンスを多く持つ企業が利益率が向上
  • ③成熟産業:「強い結びつき」のアライアンスを多く持った方が利益率向上
3.構造的なソーシャル・ネットワーク

(1)ネットワーク全体の構造に注目。

(2)マーク・グラノベッター教授の「弱い結びつきの強さ」では、情報はソーシャルな関係を通じてどこまでも流れるものであるとされるが、「構造的なネットワーク」では情報を自分の所で留めてそれを利用する人が出てくると考える。

(3)「ストラクチュアル・ホール」に注目
ロナルド・バート教授(1995年)

  • ①ネットワークの構造的な隙間あるいは構造的空隙を「ストラクチュアル・ホール」と名づけ、それを多く持つ人はネットワーク上に流れる情報や知識をコントロールすることができるようになるため、利用して得することができる。
  • ②会社員の出世や給料、フランス企業においても、「ストラクチュアル・ホール」に囲まれた(多く持つ)方が有利であることを検証。

参考

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    ≫ Ⅴ.経営学の3つの「ソーシャル」

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