書籍 ザ・ベロシティ 製造業・起死回生のシナリオ | ディー・ジェイコブ(著)

書籍 ザ・ベロシティ 製造業・起死回生のシナリオ | ディー・ジェイコブ(著)

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ザ・ベロシティ Velocity
製造業・起死回生のシナリオ

ディー・ジェイコブ、スーザン・バーグランド
三本木 亮 (訳)、久道 雅基(解説)
出版社:ダイヤモンド社
ザ・ベロシティ Velocity

  • あえて「ムダ」は残せ!

    なぜ、ムダをそぎ落とし、バランスの取れたシステムが機能しないのか。
    なぜ、「過剰な」生産能力が重要なのか。
    本当に絞るべきムダとは何か。
    どこに集中して、何を変えて、そして何に変えればいいのか!

    21世紀版「ザ・ゴール」誕生!

関連書籍
 2018年03月19日 ダイアナ・キャンダー『STARTUP(スタートアップ)』新潮社(2017/8/25)

本著は、エリヤフ・ゴールドラット博士によって、TOC(制約理論)を開発・発展させ、普及・啓蒙していく目的で設立されたAGIゴールドラット・インスティテュートの代表ディー・ジェイコブ氏とビジネス小説家で「ザ・ゴール」の共著者ジェフ・コックス 氏が、リーン生産方式とシックスシグマにTOCを融合させた新たなコンセプト「ベロシティ」を解説した一冊です。

TOCについて解説した「ザ・ゴール」と同様、企業の改革物語を通して「ベロシティ」を解りやすく解説しています。

また、改革を推進した主人公(CEOであり主婦)の行動から、変革期におけるマネジメントのあり方についても参考になります。

製造業のリーダーに限らず、様々な分野で活躍するビジネスリーダーにとっても、現場のプロセス改革やプロジェクトの進め方のヒントが随所に散りばめられています。

ベロシティ(Velocity)

組織リソースと3つの改善手法(TOC、リーン、シックスシグマ)を融合させ、組織の戦略目標達成に向け、スピードと方向性の確立を目指すコンセプト

単なる速さ(Speed)ではなく、方向性を伴った速さ(Speed with direction)

変動性のある仕組みを、制約を中心に管理するように変更して安定させた後に、LSSによって制約の段取り時間短縮やバラツキの低減に取り組んだり、非制約工程の処理をスムーズにしたりして、さらなる改善を実現していく。

展開していくためのフレームワーク:SDAIS
= Design(設計)、Activate(実行)、Improve(改善)、Sustain(継続)

リーン生産方式

TPSを研究して1990年にまとめられたコンセプト

「プロセスの単純化」「無駄の排除」「速度を加速」する方法論

長期的な継続的改善努力で、無駄を省き、バリューを高めることに集中し、それを素早く行って顧客を満足させる。

シックスシグマ

1986年にモトローラで開発され、アライドシグナル、そして1995年にGEで導入されたコンセプト

「欠陥の排除」「変動性の低減」「プロセス管理」の方法論

品質管理、改善手法の一つで、バラツキを減らすことでエラーや欠陥をなくす。

LSS(リーン・シックスシグマ)

リーンとシックスシグマを融合した改善プログラムで、米国で広く普及している。

企業の改善スピードを加速するために非常に有効な方法論

 

全体を改善するために行われる一つの改善活動は変革を必要とするが、すべての変革が改善に寄与するわけではない。

全体を改善することと、すべてを改善することとは同義ではない。

まずは、現実をありのままに受け入れて、現在の制約を制約として認識する。

この制約を制約として扱うことなく業務運営していることが、様々な問題を引き起こしていることを確認し、逆に、この制約を正しく管理することによって明るい未来が待ち受けていることが関係者の間で合意できると改善のベロシティは格段に早くなる。

ボトルネック

ビールなどに設けているボトルネック(細くなっているところ)は、注ぐ際の流れを制御するためにわざわざ設けている。

生産ラインの能力をわざと崩したアンバランス・ラインこそが、生産のフローを制御するために必要な考え方である。

投資(と在庫)を減らしながら、業務費用も減らし、スループットを増やす。

  • ・スループット:在庫が売上に、言い換えればキャッシュに変換される割合
  • ・投資(と在庫):在庫は短期的な投資、機械などの生産手段や作って売るための材料などを買うためのお金
  • ・業務費用:システム全体を動かすお金

ある日、前任CEOが退任し、営業・マーケティング部長から急遽暫定CEOに命じられた主人公が、四半期2桁成長を親会社の会長から突きつけられた。

会長から紹介された人物が推進するLSSを頼りに改革を進め、工場内の整理などの部分的な効果はあったものの、業績は回復するどころか、工場には在庫が増え、納期遅れが多発し、重要な顧客も失うことになった。

そこで、主要メンバーで構成したVチームで建て直し戦略を策定した。
これまで推進してきたLSSを継続するか。
それとも、以前、現場経験から知らないうちに行っていたTOCに戻すか。

意見が対立したが、偶然知り合った元海兵隊員が紹介したサイコロを使ったシミュレーションゲームで、LSSとTOCやドラム・バッファ・ロープの違いを体験し、決断する。

そして、現場の抵抗を受けながら様々な課題を解決し、工場の改善と研究開発部門の改善を行い業績を回復していく。

そして、「拡大建て直し戦略」「拡大戦略」へと、新たな展開をすることになる。
そして、主人公も新たな人生が始まる・・・

企業内の主要メンバーとの会話や改革活動、そして主人公の家族との会話を通して、TOCやLSSのコンセプトを理解することができます。
また、主人公の子供たちが手伝う「洗濯という家事」をする場面があることで、コンセプトを解りやすくしています。

書籍のボリュームはありますが、一気に読んでしまう一冊でした。

ザ・ベロシティ Velocity
  • ザ・ベロシティ Velocity

    ザ・ベロシティ Velocity
    製造業・起死回生のシナリオ

    ディー・ジェイコブ、スーザン・バーグランド(著)、三本木 亮 (訳)、久道 雅基(解説)
    出版社:ダイヤモンド社 (2010/11/12)
    Amazon.co.jp:ザ・ベロシティ Velocity

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